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DOBERMAN
 

世界中で愛されている犬種のひとつであるドーベルマン・ピンシャー。しかし残念ながら、さまざまな理由からドーベルマンはすべての人が容易に飼える犬種ではありません。映画やテレビで凶暴なガード・ドッグとして登場するのはきまってドーベルマンで、ドーベルマンが「凶暴なイヌ」のイメージを持っていることは事実です。たしかにドーベルマンは、ラブラドール・レトリバーのように誰に対しても愛想のよい犬種ではなく、スポーツ選手のような凛とした風貌もドーベルマンをどこか近寄りがたい存在にしているといえます。しかし、ドーベルマンを身近において彼らのことを知ろうとしてみると、彼らの独特のやさしさが、まるであぶり出しのように見えてくる不思議な犬種です。

              Reported by  キャスリーン・マカチオン
                 Translated by  古武家勝宏

                                 

 
スタンダード
 
 従順で、機敏で、そして才能にあふれたガード・ドッグ・コンパニオン犬。外観的にも迫力があり、警備犬としてすばらしい役目をするイヌだが、飼い主やハンドラーに忠実で、見た目にはあまり目立たないおおらかな優しさを持っているため、家庭犬やコンパニオン犬としても非常に適している犬種。寒さに非常に弱いため、保温に気をつけてやることは必要。理想とされる大きさは体高65〜72cm、体重30〜42kg。毛色は単色で、フォーン、ブルー、褐色、そして黒などがある。

 
運動量と知能レベルの関係
 


 ドイツを原産国に持ち、ワーキング種に属するドーベルマンは、さまざまな犬種の中でも一二を争うほどの高い知能レベルを持つ犬種です。かつて、この犬種の最初の権威者であったドイツのオットー・ゴーエラー氏は、「人間の脳を持ったイヌ」であるとドーベルマンの知能の高さを表現しました。まさかここでゴーエラー氏の説に賛同するつもりはありませんが、なかにはドーベルマンの知能レベルを「人間の子どもの5〜6歳児ほどのもの」だとする科学者もいて、この犬種の知能が他の犬種にくらべても高い位置にあることは事実です。現実に、ドーベルマンは一般的な家庭犬が必要とするごく基本的なしつけから、訓練士によるレベルの高い特別な訓練にいたるまで、すばやく確実に自分のものにし、期待以上の仕事をこなすことのできる知能と実践力をかねそなえています。

 この素晴らしいドーベルマンのクオリティは、当然のことながら、健全な肉体ときちんとした生活環境があることで発揮されます。健全な肉体の基本は適切な栄養と充分なエクササイズによってもたらされ、特に成犬のドーベルマンにとってエクササイズは非常に重要なウエイトを占めるので、飼い主はドーベルマンのエクササイズのニーズを飼い主の責任のひとつとして充分に満たしてやらなければならず、それはただドーベルマンを裏庭に放しておくという程度のエクササイズだけではとうてい達成できません。ドーベルマンを飼おうと決める前には、エクササイズの重要さを充分に考慮に入れて検討することが必要です。日々の生活が忙しい人、イヌの散歩をしてやるのが少しでも億劫だと思う人、そして小さな子どもがいて、その世話に忙しくてイヌにかけてやれる愛情や時間が少ない飼い主のもとでは、よいドーベルマンはきわめて育ちにくいといえます。運動量供給の難しさ、これがドーベルマンが万人向けの犬種でないということの最大の理由のひとつといえるかもしれません。

 
凶暴な犬のイメージの裏側
   ドーベルマンの頭はすっきりとコンパクトで、うすい皮膚が頭蓋骨をぴったりと覆っています。多くの場合、生後4ヶ月あたりで聴覚改善と外観改良のための段耳をおこない、耳を立たせます。ダーク・カラーの目は、多くの場合この犬種の持つ優しさを物語っており、同時に、かしこそうなイヌの印象を与えます。エレガントにほっそりと長い首は非常に筋肉質で、その下に続く均整のとれた充分な広さと深さの胸部につなっがており、その下に続く四肢はほどよい長さを持ち、優れた機敏性を誇っています。特に後ろ足は完全なアーチ型をとり、素晴らしい力強さをたくわえています。光沢のある密生した硬め被毛は滑らかで、ほどよい光沢を持っています。口吻は先細りでシャープな印象をあたえ、口吻にそって
薄くついている唇のあいだからのぞく大きな歯には迫力があります。

 
防衛と保護の本能
 
 ドーベルマンは、非常に忠誠心が高く愛情深い犬種です。「防御と保護の本能」はドーベルマンの持つ性質のひとつで、彼らがいったん飼い主と認めたその家族、そして、その所有物を全身全霊をかけて守ろうとし、必要であれば攻撃をしかけることもあります。これらの本能は、ドイツ系のドーベルマンの血統を引くものほど強いとされており、アメリカ系のドーベルマンはコンパニオン犬として飼われる傾向が強いため、これらの性質をかなりおさえられてブリーディングされているといわれています。心ないブリーダーがおこなった無節操なブリーディングから誕生した固体の多くには、神経質で恐れを噛みつくことで表現する固体がいるため、ドーベルマンの子犬はきちんとした信頼のおけるブリーダーから手に入れましょう。

 たしかに成犬のドーベルマンのルックスは、多くの人にとってフレンドリーなイヌの顔のイメージとはほど遠いかもしれません。とくに断耳されたあとなど、ドーベルマンの顔は豹変して凶暴なイメージが増して見えてくるため、なおさらのことです。欧米のドーベルマン・ファンシャーたちのあいだでは「イーグル(ワシ)のルックスを持つイヌ」だと好まれて語られているように、ドーベルマンの顔にはどこかワシのように冷酷無残で高潔な生き物の印象がただよいます。スレンダーで筋肉質なボディもエレガントで、ドーベルマンに凶暴なイメージを与えるのに一役買っており、ドーベルマンをあまりよく知らない人たちがドーベルマンを恐れるのは無理もないかもしれません。

 そんな近寄りがたいイメージを持つドーベルマンですが、アメリカのドーベルマン・ファンシャーの多くが口を揃えて「ドーベルマンは大型犬の毛皮を着たネズミである」というふうに、ドーベルマンは家族を愛する優しい心を持ったチャーミングな生き物であり、同時に素晴らしいコンパニオン・アニマルでもあります。ドーベルマンは人間を愛し、飼い主に体をさわられることを何よりも好み、そして飼い主をどこまでも信じて「防御と保護の本能」をもって飼い主を守ろうとします。本当によいドーベルマンは、このように飼い主に非常に忠実な犬種であり、ただやみくもに吠えるだけの犬種ではけっしてありません。

 前項で「ドーベルマンは大型犬の毛皮を着たネズミである」といったように、ドーベルマンは大型犬であるにもかかわらず、小型犬のような性格を持った犬種です。人間のぬくもりが大好きで、いつでもどこでも飼い主と一緒にいて行動をともにしたがります。ネコなどの他種の動物とも仲良くすることも、飼い方によっては充分に可能です。短毛種で被毛に耐寒性がないため寒さを極端に嫌がり、ネコのように暖かいところを好みます。これらのことから、この犬種はおしなべて室内で飼われるべき犬種だということがいえるでしょう。屋外で飼う場合、冬季には犬舎に暖房器具をつけてやるなど、保温には充分に気をつかってやることが大切です。寒さに弱いことにくわえて、ドーベルマンは遺伝性心臓疾患を患いがちです。体色のうすいもののなかには皮膚が弱いものが多いので、清潔な生活環境をつくってやるなど注意が必要です。









                         愛犬マガジン ワン 2000年12月号から抜粋
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